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大阪高等裁判所 昭和24年(を)3531号 判決

被告人

西沢武夫

外一名

主文

本件控訴はいずれもこれを棄却する。

当審に於ける未決勾留日数中各百二十日をそれぞれ本刑に算入する。

理由

弁護人馬場次郞控訴趣意第一点について。

しかし、原審公判調書によると、裁判官が本件被告事件について陳述することがあるか、どうかと尋ねたところ、被告人はそのとおりであつて別に争うことはない旨述べたとの記載がありその趣旨は原判示事実を具体的に供述したものと認められるから、これを証拠の一として採つたものであつて所論虚無の証拠とは言えないから、論旨は理由がない。

(弁護人馬場次郞の控訴趣意第一点)

原判決は採証の方法に違反がある、而も此の違反は判決に影響を及ぼす事が明らかであると考える。原判決は証拠の標目として判決中其の記載事項の末尾に被告人等の当公廷に於ける供述を以てしている。然し当公廷に於ける被告人の供述とは如何なる事項を指すのか不明であつて第一囘の公判調書には記載されていない。只公訴事実に対し陳述する事があるかの裁判官の問に対し其の通りである旨の被告人等の陳述があつた旨記載されているが之は果して供述とは云い得るか疑問である。

犯罪事実を認定するには個々具体的の事実を詳細に訊問し供述さすべきであつて冒頭陳述は被告人が被告事件に付ての認否に過ぎない。又犯罪事実の如何なる部分に照応する供述であるのか分明でない、従つて原判決は採証の方法を誤り虚無の証拠を断罪の資料に供した違法があり、判決に影響を及ぼすものと思料する。

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